【助産師監修】
母乳が出ない
ときの原因と
対処法とは?
適切な マッサージケア
も解説

プレママ

出産後、「母乳がなかなか出ない」「足りているのか分からない」
と不安を感じるママは多いものです。
また、自己流で強くおっぱいマッサージを行うと、
むくみや腫れ、乳腺炎を招くことがあります。
この記事では、母乳が出る仕組みや出にくい原因・対処法とあわせて、
トラブルになりにくい適切なマッサージケアの方法についても分かりやすく解説します。

母乳は
いつから出るの?

母乳は赤ちゃんが生まれるとすぐに出ると思うママも多いですが、
実際には、出産直後から多量の母乳が分泌されるわけではありません。
そもそも、生まれたての赤ちゃんの胃は
さくらんぼくらいの大きさしかなく、多量の母乳は必要ないのです。

産後すぐは「初乳」と呼ばれる、黄色~黄白色でやや粘りのある母乳が少量出ますが、
一般に産後2~4日頃(出産後36~96時間)から乳房の張りとともに
「母乳が増えてきた」と感じる場合が多いとされています。

母乳が出るメカニズム

母乳分泌には、「プロラクチン」と「オキシトシン」と呼ばれる
2つのホルモンが深く関わっています。

プロラクチンは母乳を作る働きがあり、
オキシトシンは作られた母乳を乳頭側へ送り出す働き(射乳反射)があります。
赤ちゃんが乳首・乳輪をしっかり吸う、あるいは搾乳で乳房が刺激されることで、
これらの反応が起こりやすくなります。

さらに産後9日を過ぎる頃からは、母乳の生産システムが変化し、
授乳・搾乳で乳房から取り除かれる乳汁量によって
母乳の生産量が決まる「需要と供給」の原理で調節されるようになります。

そのため、出産直後からの1〜2週間は、
母乳の分泌をスムーズに軌道に乗せるための非常に大切な時期です。
この時期に「欲しがるだけあげる」といった頻回授乳が推奨されるのは、
こうした体の仕組みに基づいています。

母乳が出ない原因

「母乳があまり出ない」と感じる場合、そこにはいくつかの原因が考えられます。

まず最も多い理由として挙げられるのが、授乳や搾乳の頻度が不足していることです。
先ほど触れた通り、母乳は「需要と供給」のバランスでつくられます。
授乳の間隔が空きすぎてしまうと分泌刺激が減り、
必要性がないと判断されて分泌量が落ちてしまうのです。

次に重要なのが、「ラッチオン(吸着)」がうまくいっていないケースです。
赤ちゃんが乳頭の先だけを浅く吸っている(浅飲み)と、
赤ちゃん自身が十分に飲めないだけでなく、乳房への刺激も弱くなります。
その結果、母乳分泌を維持するための反応が起こりにくくなってしまいます。

また、ママの心身の状態も無視できません。
強いストレスや過度の疲労はホルモンバランスに影響を与え、
とくに母乳を押し出す役割を持つ「オキシトシン」の働きを妨げて、
母乳が出にくく感じる一因になることがあります。
心身を休めることは、スムーズな授乳のためにも大切です。

母乳が出ないときの
対処法

「母乳が出ない」と感じたときは、焦らずにまずは以下の方法を試してみましょう。

授乳・搾乳の
回数を増やす

母乳の分泌を促す基本は、こまめに乳房を刺激することです。

とくに生後4週までの新生児期は、1日8〜12回を目安に、
赤ちゃんが欲しがるタイミングで授乳しましょう。

補 足

母乳の産生を促すホルモン「プロラクチン」は、夜間に分泌量が増加します。
そのため夜もしっかり授乳や搾乳を続けることが、母乳の分泌量を維持するには役立ちます。

Check

赤ちゃんの
くわえ方を見直す

母乳を増やすには、回数と同じくらい「正しく飲めているか」が重要です。
以下のリストを参考に、赤ちゃんが深くくわえられているか(ラッチオン)をチェックしてみましょう。

赤ちゃんのくわえ方Check!

  • 乳頭だけではなく、乳輪まで深く口に含んでいる。
  • 赤ちゃんの上下の唇がアヒルの口のように、外側にめくれている。
  • 赤ちゃんのアゴが乳房から離れていない。
  • 授乳中や授乳後に、ママが乳首に痛みを感じない。

浅飲み(乳頭だけを吸う状態)が続くと、母乳が十分に引き出されないだけでなく、
乳頭の傷や乳腺炎などのトラブルを招く原因にもなります。

Check

育児用粉ミルクを
上手に併用する

母乳育児において「完全母乳」にこだわりすぎる必要はありません。
赤ちゃんに以下のような母乳不足のサインが見られたら、
粉ミルクで栄養を補うことを検討しましょう。

母乳不足のサインCheck!

  • 1日に出る尿の回数が6回未満である。
  • 体重が増えていない。
  • 肌や唇が乾燥している。
  • 授乳後も不機嫌な状態が続く。
  • 授乳の時にゴクゴク飲み込む様子が見られない。

大切なのは、母乳か粉ミルクかという手段よりも、
「赤ちゃんが十分な栄養と水分をとれているか」という視点です。
ただし、粉ミルクを足しすぎると赤ちゃんがお腹いっぱいになり、
授乳の機会が減って母乳の分泌が下がってしまうこともあります。
足す量は赤ちゃんの様子を見ながら調整しましょう。
また、ママが疲れているときは粉ミルクを周囲に頼り、
ゆっくり休む時間を作ることも、結果として母乳分泌に良い影響を与えます。

「【月齢別】赤ちゃんの授乳回数と間隔の目安とは?」

授乳を
スムーズにするための
マッサージケアを行う

乳房の張りや乳輪まわりのむくみが強いときは、
授乳前に乳輪周囲を優しくほぐしたり、少量を手でしぼったりすることで、
赤ちゃんがくわえやすくなることがあります。
ただし、乳房を強く揉んだり、
しこりを押し流したりするようなマッサージは勧められません。
かえって痛みやむくみ、炎症を悪化させるおそれがあるため注意しましょう。


[乳頭・乳輪部マッサージ]

赤ちゃんがくわえる部分を柔らかく整えるためのケアです。

ケアを行う前は、石けんと流水で手を洗い、清潔な状態で行いましょう。


※横にスクロールします。


  1. 圧迫:
    親指・人差し指・中指の3本で、乳頭と乳輪を優しくつまみます。
    1回3秒程度の圧迫を、指の位置や方向を変えながら1分ほど繰り返します。
  2. もみずらし:
    親指と人差し指の指の腹で、
    こよりを作るようなイメージで縦・横に優しくもみずらします。
    最初はゆっくり、痛みがない範囲で行いましょう。

乳輪がやわらかくなり、乳頭から母乳が少しにじむ程度になったら、
マッサージを切り上げて授乳を始めましょう。

補 足

もし乳首に痛みがあったり、少しでも傷があったりするときは、無理をせずマッサージはお休みしてくださいね。

まとめ

「母乳が出ない、足りない」と感じても、
産後数日はまだ分泌が本格化する準備段階であることも少なくありません。
まずは焦らず、授乳回数を増やして、
乳首を深くくわえさせること(ラッチオン)を意識することから始めてみましょう。

同時に、赤ちゃんの体重や排尿の回数、機嫌などをよく観察することも大切です。
もし不足のサインが見られる場合は、
必要に応じて育児用粉ミルクの力も借りるという柔軟な視点を持ってください。

また、授乳前のケアとして乳輪まわりをやさしく整えたり、
少量の母乳を手でしぼったりすることで、赤ちゃんがくわえやすくなることがあります。
ただし、乳房を強く揉んだり、しこりを押し流したりするようなマッサージは勧められません。
乳房の強い痛み、腫れ、熱感、発熱などがある場合は、
すぐに助産師やかかりつけ医に相談することが大切です。

【監修】:森崎美穂
(看護師・助産師)

京都大学医学部附属病院の周産期母子医療センターにて10年間勤務。
病棟での分娩介助や産後の育児支援、ベビーケアに携わる。
現在はクリニックで分娩介助をしながら新生児育児に関する情報発信に携わる。

参考資料

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