ミルクに含まれる
新生児に
必要な栄養素と
その働きとは?
健やかな成長の土台を築く新生児期。
「わが子に必要な栄養をしっかり届けたい」と、
日々の授乳に心を砕いているパパやママも多いことでしょう。
母乳やミルクに含まれる一つひとつの栄養素には、
赤ちゃんを支える大切な役割があります。
この記事では、新生児の成長に欠かせない
栄養素の働きについて、わかりやすく解説します。
新生児が摂取すべき
栄養素と量の考え方
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、
赤ちゃんの成長に合わせて摂取すべきエネルギー量や
栄養素の種類・目安量を月齢区分ごとに設定しています。
乳児の
食事摂取基準(0〜11か月)
エネルギー・三大栄養素
| エネルギー・栄養素 | 月齢 | 0〜5か月 | 6〜8か月 | 9〜11か月 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 策定項目 | 男児 | 女児 | 男児 | 女児 | 男児 | 女児 | |||
| エネルギー | (kcal/日) | 推定エネルギー必要量 | 550 | 500 | 650 | 600 | 700 | 650 | |
| たんぱく質 | (g/日) | 目安量 | 10 | 15 | 25 | ||||
| 脂質 | 脂質 | (%エネルギー) | 目安量 | 50 | 40 | ||||
| 飽和 脂肪酸 |
(%エネルギー) | ― | ― | ― | |||||
| n-6 系 脂肪酸 |
(g/日) | 目安量 | 4 | 4 | |||||
| n-3 系 脂肪酸 |
(g/日) | 目安量 | 0.9 | 0.8 | |||||
| 炭水化物 | 炭水化物 | (%エネルギー) | ― | ― | ― | ||||
| 食物繊維 | (g/日) | ― | ― | ― | |||||
※横にスクロールします。
ビタミン・ミネラル
| エネルギー・栄養素 | 月齢 | 0〜5か月 | 6〜8か月 | 9〜11か月 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 策定項目 | 男児 | 女児 | 男児 | 女児 | 男児 | 女児 | ||||
| ビタミン | 脂溶性 | ビタミンA | (μgRAE/日)1 | 目安量 | 300 | 400 | ||||
| 耐容上限量 | 600 | 600 | ||||||||
| ビタミンD | (μg/日) | 目安量 | 5.0 | 5.0 | ||||||
| 耐容上限量 | 25 | 25 | ||||||||
| 水溶性 | ビタミンE | (mg/日) | 目安量 | 3.0 | 4.0 | |||||
| ビタミンK | (μg/日) | 目安量 | 4 | 7 | ||||||
| ビタミンB₁ | (mg/日) | 目安量 | 0.1 | 0.2 | ||||||
| ビタミンB₂ | (mg/日) | 目安量 | 0.3 | 0.4 | ||||||
| ナイアシン | (mgNE/日)2 | 目安量 | 2 | 3 | ||||||
| ビタミンB₆ | (mg/日) | 目安量 | 0.2 | 0.3 | ||||||
| ビタミンB₁₂ | (μg/日) | 目安量 | 0.4 | 0.9 | ||||||
| 葉酸 | (μg/日) | 目安量 | 40 | 70 | ||||||
| パントテン酸 | (mg/日) | 目安量 | 4 | |||||||
| ビオチン | (μg/日) | 目安量 | 4 | 10 | ||||||
| ビタミンC | (mg/日) | 目安量 | 40 | 40 | ||||||
| ミネラル | 多量 | ナトリウム | (mg/日) | 目安量 | 100 | 600 | ||||
| (食塩相当量) | (g/日) | 目安量 | 0.3 | 1.5 | ||||||
| カリウム | (mg/日) | 目安量 | 400 | 700 | ||||||
| カルシウム | (mg/日) | 目安量 | 200 | 250 | ||||||
| マグネシウム | (mg/日) | 目安量 | 20 | 60 | ||||||
| リン | (mg/日) | 目安量 | 120 | 260 | ||||||
| 微量 | 鉄 | (mg/日)3 | 目安量 | 0.5 | ― | |||||
| 推定平均必要量 | ― | 3.5 | 3.0 | 3.5 | 3.0 | |||||
| 推奨量 | ― | 4.5 | 4.5 | 4.5 | 4.5 | |||||
| 亜鉛 | (mg/日) | 目安量 | 1.5 | 2.0 | ||||||
| 銅 | (mg/日) | 目安量 | 0.3 | 0.4 | ||||||
| マンガン | (mg/日) | 目安量 | 0.01 | 0.5 | ||||||
| ヨウ素 | (μg/日) | 目安量 | 100 | 130 | ||||||
| 耐容上限量 | 250 | 350 | ||||||||
| セレン | (μg/日) | 目安量 | 15 | 15 | ||||||
| クロム | (μg/日) | 目安量 | 0.8 | 1.0 | ||||||
| モリブデン | (μg/日) | 目安量 | 2.5 | 3.0 | ||||||
※横にスクロールします。
1 プロビタミンAカロテノイドを含まない。
2 0〜5か月児の目安量の単位は mg/日。
3 6〜11か月は1つの月齢区分として男女別に算定した。
新生児の成長を支える基本の3大栄養素
赤ちゃんの成長の基礎となるのは、エネルギー源であり、
体を作る材料でもある「脂質」「炭水化物」「たんぱく質」の3大栄養素です。
母乳や粉ミルクは、これらを新生児が効率よく消化・吸収できるよう、
理想的なバランスで含んでいます。
脂質
脂質は、母乳や粉ミルクから得られるエネルギーの
約半分を占める、主要なエネルギー源です。
また、脂質は体の細胞を包む細胞膜の材料となるほか、
脳や神経組織、視力の発達に欠かせない
DHA(ドコサヘキサエン酸)を供給する大切な役割も担っています。
生まれたばかりの赤ちゃんは、
自身の体内で成長に必要な量のDHAを作り出す働きが未熟であることから、
母乳や粉ミルクから補う必要があります。
炭水化物
母乳や粉ミルクに含まれる炭水化物の大部分は乳糖であり、
エネルギーの約40%を占めています。
乳糖以外には、微量のグルコースやガラクトース、オリゴ糖などが含まれています。
乳糖は体内の酵素で分解され、赤ちゃんの脳や
神経組織の発達に欠かせないガラクトースを供給します。
また、体を動かすエネルギー源となるだけでなく、
ビフィズス菌や乳酸菌を増やして腸内環境を整える役割も持っています。
さらに、分解されずに大腸へ届いた乳糖は、
腸内細菌によって乳酸へと変わり、腸内を弱酸性に保ちます。
これにより、病原菌の増殖が抑えられるとともに、
カルシウムの吸収もスムーズになります。
たんぱく質
たんぱく質は、筋肉や内臓、皮膚、さらには骨の土台(コラーゲン)に至るまで、
さまざまな組織を作る基本材料となります。
また、病気から体を守る抗体や、体内の化学反応(代謝)を助ける
酵素の材料にもなり、未発達な赤ちゃんの体の働きを支えます。
母乳に含まれるたんぱく質は、
ホエイ(乳清)たんぱく質とカゼインから構成されています。
一般に、ホエイたんぱく質はカゼインよりも胃で固まりにくく、
消化吸収されやすい性質があるため、
多くの粉ミルクは母乳のバランス(ホエイたんぱく質優位)を参考に、
赤ちゃんに負担が少ないよう調整されています。
体の機能を
支える栄養素
ビタミン・ミネラル
「ビタミン」や「ミネラル」には、体内の化学反応(代謝)を助けたり、
細胞や血液の機能を正常に保ったりする重要な働きがあります。
母乳の成分は日々変化しますが、出産後の数日間に分泌される「初乳」には、
特にビタミンAやE、ナトリウム、カリウムなどが多く含まれます。
ビタミンAやEは、外界の刺激から赤ちゃんの
デリケートな肌や粘膜を守り、抵抗力を高める役割を果たします。
ナトリウムやカリウムは、赤ちゃんの体の水分バランスを整え、
神経や筋肉が正しく働くようにサポートする役割があります。
また、母乳に含まれるビタミン・ミネラルの量は、ママの食事内容や栄養補給の影響を受けることがわかっています。
そのため、新生児・乳児にとっては、次に挙げるビタミン・ミネラルをとくに意識して摂取することが大切です。
ビタミンD
ビタミンDには、カルシウムの吸収を助け、丈夫な骨づくりを支える働きがあります。
ただし母乳にはビタミンDが十分に含まれていないことが多いため、
完母(完全母乳)で育つ赤ちゃんには、サプリメントでの摂取が推奨される場合があります。
一方、粉ミルクではあらかじめビタミンDが強化されているため、
ミルクを十分に飲んでいる場合は追加で補う必要はありません。
ビタミンK
ビタミンKには、血液を固めて出血を止める働きがあります。
しかし、母乳に含まれるビタミンKの量は少なく、
さらに新生児は腸内細菌叢が未発達なため、
本来は腸内細菌によって作られるビタミンKを体内で十分に産生することができません。
そのため、出生後にビタミンK₂(経口シロップなど)を複数回投与し、
ビタミンK欠乏性出血症を予防するのが一般的です。
なお、粉ミルクにはあらかじめ適切な量のビタミンKが配合されています。
鉄
鉄には、赤血球のヘモグロビンの成分として、全身に酸素を運ぶ働きがあります。
赤ちゃんは母親の胎内で蓄えた鉄(貯蔵鉄)を持って生まれてきますが、
生後6か月頃までにはこの貯蔵鉄が体内で消費され、不足しやすくなります。
母乳に含まれる鉄分はごくわずかであるため、
離乳食や粉ミルク・フォローアップミルクで意識的に補う必要があります。
母乳研究から
注目された生理活性成分
母乳は栄養供給に加えて多様な生理活性成分を含むことが知られており、
ここでは代表的な生理活性成分であるラクトフェリンと
ヒトミルクオリゴ糖(HMO)についてお伝えします。
ラクトフェリン
ラクトフェリンは、特に初乳に多く含まれる鉄結合性の糖たんぱく質で、
その名称は「lacto(乳)」と「ferrin(鉄)」に由来しています。
ラクトフェリンは、微生物の増殖に必要な鉄を取り込むことで、
病原性の高い細菌やウイルスの増殖を抑える働きがあります。
一方、善玉菌であるビフィズス菌に対してはむしろ増殖を助け、
腸内環境を整える働きも報告されています。
また、ラクトフェリンには免疫物質である「IgA(免疫グロブリンA)」の産生を促し、
腸管の防御機能(腸管免疫)を高める作用があることも示唆されています。
さらに、鉄の吸収を促して貧血の改善に寄与する働きや、
肌の新陳代謝を高めて乾燥を防ぐ働きなど、
さまざまな生理機能を持つことから「多機能たんぱく質」とも呼ばれています。
オリゴ糖
母乳には「ヒトミルクオリゴ糖(HMO)」という、
母乳ならではの特徴的なオリゴ糖が含まれており、
これまでに200種類以上の形があることがわかっています。
このHMOは消化酵素で分解されにくく消化されずに大腸まで届き、
ビフィズス菌などの善玉菌を増やすための
エサ(プレバイオティクス)として役立つことが知られています。
また、オリゴ糖を配合した粉ミルクを飲むと、
ミルクで育つ赤ちゃんのうんちが柔らかく黄色っぽい色になり、
母乳で育つ赤ちゃんの便の状態に近づくことが報告されています。
まとめ
この記事では、赤ちゃんの成長にとって大切な栄養素とその働きについて解説しました。
日々の赤ちゃんの様子や発育を見守りながら、
母乳やミルクの特徴を理解するための基礎知識としてお役立てください。
粉ミルクの選び方については、こちらの記事をご覧ください。
【監修】:藤原智沙恵
薬剤師、京都大学大学院医学研究科に在籍。
小児科門前薬局で5,000人以上の乳幼児や家族に対して服薬指導・育児の健康相談の実績がある。現在は、株式会社Officeファーマヘルスの代表として、疾患啓発やヘルスプロモーションを目的とした医療・健康分野の情報発信・企画に携わる。
株式会社Officeファーマ
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参考資料
- 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書.
- 日本小児科学会栄養委員会. 母乳栄養に関する提言. 日本小児科学会雑誌. 2007;111(7):922-941.
- Decsi T, et al. Role of long-chain polyunsaturated fatty acids in early human neurodevelopment. Nutr Neurosci. 2000;3(5):293-306.
- 川井正信ほか. ビタミンDに関する提言. 日本小児科学会雑誌. 2025;129(3):494-496.
- Centers for Disease Control and Prevention. Vitamin D.
- 日本小児科学会. 新生児と乳児のビタミンK欠乏性出血症発症予防に関する提言.
- 摂津市. 【こどもの食コラム】乳児期の鉄不足に注意!
- Duman H, et al. Human milk oligosaccharides: decoding their structural variability, health benefits, and the evolution of infant nutrition. Nutrients. 2024;17(1):118.
- 菅野貴浩ほか. 栄養法別にみた乳児の発育、哺乳量、便性ならびに罹病傾向に関する調査成績(第10報).小児保健研究. 2005;64(4):594-601.